【就活・転職】コンサルキャリアの人気はいつまで続くか?

就活生や転職者の間でコンサル人気が高まっている

就活生の人気業種は時代とともに遷移

東大・京大・早慶を中心とするトップ層の就活生の人気業種は時代とともに遷移してきた。バブル期には弁護士・官僚・興銀人気を博し、バブル崩壊後はテレビ局や医学部・起業、リーマンショック前は外資系投資銀行や商社、2015年頃まではDeNAやサイバーエージェントなどのITベンチャーが人気業界だった。

リーマンショック後にITベンチャーと並んで人気を集めたのがコンサルティング業界であり、マッキンゼーなどの外資系ファームを中心に東大生の人気就職先ランキング上位を占めている。2019年度卒業の東大生・京大生が選んだ人気企業ランキングでは、上位10社のうち7社がコンサルティング会社、そのうち野村総合研究所とデロイト・トーマツを除く5社が外資系企業となった。

東大生・京大生が選ぶ人気企業ランキング(2019年度卒業)

順位2019年度卒業前年度順位前年との差
1マッキンゼー・アンド・カンパニー7+6
2野村総合研究所4+2
3ボストン・コンサルティング・グループ6+3
4アクセンチュア8+4
5ベイン・アンド・カンパニー2-3
6三菱商事1-5
7A.T.カーニー11+4
8デロイト・トーマツ・コンサルティング12+4
9P&Gジャパン3-6
10ゴールドマン・サックス13+3
ONE CAREER調べ

なお、デロイト・トーマツ・コンサルティング(通称DTC)は外資系と勘違いされがちだが、実態はグローバルに事業を展開するデロイトグループのフランチャイズとして日本で事業を行うコンサルティング企業であり、日系企業と呼ぶべきだ。(DTC社員は外資系コンサルを自称する傾向にあるが、否定してプライドを傷つけるのではなく優しい顔で話を聞いてあげよう)

(参考)文系学生全体の就職先人気ランキング

参考までに全大学生を対象とした就職先人気ランキングを添付しているが、こちらはコンサル人気など関係なく、知名度の高い日系大手企業が引き続き上位を占めている。

順位1990年2000年2010年2019年
1全日本空輸(ANA)JTBJTBJTB
2三井物産NTTドコモ資生堂全日本空輸(ANA)
3伊藤忠商事SONY全日本空輸(ANA)東京海上日動火災保険
4三菱銀行近畿日本ツーリストオリエンタルランドSONY
5日本航空(JAL)資生堂三菱東京UFJ銀行日本航空(JAL)
6住友銀行日本航空(JAL)明治製菓味の素
7JR東海ベネッセJR東日本伊藤忠商事
8富士銀行トヨタ自動車三井住友銀行コナミ
9NTT全日本空輸(ANA)HISSONYミュージック
10東京海上日動火災保険講談社ベネッセアサヒビール
マイナビ調べ

(参考)理系学生全体の就職先人気ランキング

順位1990年2000年2010年2019年
1日本電気(NEC)SONY味の素SONY
2SONY資生堂パナソニック味の素
3富士通本田技研工業カゴメ明治グループ
4NTTNTTドコモ資生堂カゴメ
5日本IBMトヨタ自動車SONY富士通
6松下電器産業旭化成工業明治製菓トヨタ自動車
7日立製作所NTTデータ通信三菱重工業サントリー
8日産自動車加嶋建設JR東日本アサヒビール
9本田技研工業味の素JR東海森永乳業
10トヨタ自動車竹中工務店東芝オムロン
マイナビ調べ

終身雇用神話の崩壊とスキルセット志向

東大・京大・早慶を中心とした上位学生におけるコンサル人気にはさまざまな背景要因があるが、特に大きいのは終身雇用神話の崩壊だと思われる。これまでは東芝や富士通に入社すれば一生安泰だと思われていたものが、経営不振やリストラなどの報道を受けて揺らいでいる。代わりに台頭してきたのが、どこでも通用するスキルセットを身につけることによる「個としての安定」だ。

終身雇用を前提として長い期間をかけて社員を教育する大企業では若いうちに十分なスキルセットを身につけることが難しく、また仕事のやり方が標準化されておらず会社独自のものが多いため、せっかく身に付いたスキルが他社で役に立たないケースもある。

終身雇用の崩壊 トヨタ

一方、コンサルティング会社や投資銀行では若手のうちから戦力化を求められ、短期間で幅広いスキルを身につけることが出来る。また、外資系企業では仕事のやり方の標準化が進んでおり、将来転職した際にも自分の経験が重宝されやすい傾向にある。

国内コンサル市場の拡大

就活生のコンサル人気の背景には国内のコンサル業界の拡大という要素も見過ごせない。コンサルとよく比較されるゴールドマン・サックスなどの投資銀行はコンサルと同様にトップofトップの学生からは人気だが、コンサル業界と比べて毎年の採用数が少ないため、東大生・京大生全体の人気ランキングには入りにくい。

国内のコンサル市場は過去数年間で急拡大してきており、これは背景にはアベノミクス以降の好景気によるものだ。コンサルティングは顧客企業にとってはリサーチや新規の取り組みなどの外注であり、余裕のあるときは多く発注し、景気が悪くなると真っ先に切られる傾向にある。

中途機会の拡大と中途人材の待遇の改善

コンサル業界が就活生に人気になったもう1つの要因としては、商社や銀行などの日系大企業における中途採用機会の拡大と中途人材への待遇の改善が挙げられる。商社や銀行、メーカーなどの日系大手企業はこれまで日本型雇用システムを維持しており、「新卒一括採用」「年功序列」「終身雇用」の3要素が相互補完的に作用してきた。

年功序列制度のもとでは、キャリアの前半においては「市場価値(≒提供価値)>年収」、後半においては「市場価値<年収」となり、終身雇用を約束することによって生涯の合計で「市場価値=年収」となるように設計されていた。そのため、キャリアの後半で「市場価値<年収」のステージだけにフリーライドすることは禁じ手であり、新卒一括採用にこだわってきた背景がある。

そのため、新卒でコンサルティング会社に就職してから中途で商社などに入社しても新卒入社組との間に待遇の差が付けられており、コンサルティング会社に就職したあとのキャリア機会を狭める要因になっていた。

しかし、近年になって終身雇用が崩壊してきたことや、銀行や商社においても新卒で採用した人が優秀な人から順番に転職してしまう事態が多発したことで、新卒・中途を問わず能力や経験に応じて適切な待遇を与える方向性に変化してきた。

その結果、商社の事業に興味がある学生にとっても新卒でコンサル業界に入り、数年間の修行のあとに商社に中途として入ることが可能になり、就活生のコンサル人気に拍車をかけることになった。

長期的に国内コンサル市場は拡大する

GDP対比でコンサル業界に成長余地

過去数年間で急成長してきた国内のコンサルティング市場は、今後も長期的に成長する可能性が高い。長期的と書いたのは、一時的な経済へのダメージや5年単位での不景気によって短中期的にはマイナス成長になる可能性が十分にあるからだ。

長期的に国内コンサルティング市場が成長すると予想する第1の根拠は、日本におけるコンサルティング・サービスの浸透度合いが、他の先進国と比較してまだ低いと考えられることだ。

コンサルティング業界の市場規模に関する正確なデータは残念ながら一般に公開されているものが少ないが、とある外資系のコンサルティング会社の営業資料(Confidential)には、コンサルティングが普及しているアメリカやドイツに比べ、日本のコンサルティング市場はGDP比で5倍程度の成長余地があると書かれている。

経営の合理化余地が大きい

日本でコンサルティングの活用が拡大する2つ目の理由としては、日系企業の経営には合理化の余地が大きいということが挙げられる。一般論として、日本は労働者の教育水準や知的能力は高い一方、彼らを束ねて会社のかじ取りをする経営陣のマネジメント能力が著しく低く、会社の価値を損ねているという指摘がある。

欧米では労働者と経営者のキャリアパスが明確に分かれており、経営者を目指す人はコンサルティング会社や投資銀行を経てMBAを取得し、早期からリーダーとしての訓練を受けることが一般的だ。そのため、企業の経営も標準化・合理化が進み、企業が持つアセット(資産、人材、知財等)を最大限に活用して高い利益を稼ぎ出すことが可能になる。

MBA

一方、日本では生え抜きの経営者が多く、労働者の延長線上に経営者という役職がある。社長の椅子は課長や部長の椅子と同様に社内の出世競争によって決まり、一定の任期を経て次のサラリーマンにバトンタッチする。近年では「プロ経営者」と呼ばれる職業が増えてきているが、全体に占める割合は依然としてわずかだ。

日本企業が今すぐに人事制度を変更して外部の経営者を積極的に招くことは想像しにくいが、代わりにコンサルティング会社を起用することで外部から経営を合理化することが出来る。特に外資系のコンサルティング会社は海外で蓄積したノウハウや標準化された知見を多く持つため、変化を求める日本企業のマネジメントとの相性は非常に良い。

経営に求められる変化のスピード

上記の2点に加えて国内のコンサルティング市場の成長を後押しする要因として、経営に求められる変化のスピードの高速化がある。これはテクノロジーの変化が急速に起きていることに加え、グローバリゼーションの進展によって企業の競争相手の定義が広がり、従来よりも幅広い分野に対して常に気を配って新しいテーマにキャッチアップする必要が出てきているためだ。

日系企業の多くは経営企画室やCEO室などに多くの人員を抱えて常に自社の競争戦略を考えているが、変化のスピードが速まることで自社のリソースだけでは迅速なキャッチアップが難しくなる機会が増えてくる。

その際に、グローバルに展開して日々最先端の情報に触れているコンサルティング会社は非常に役に立つ。今では総合商社の多くがマッキンゼーやBCGなどの外資系コンサルティング会社を利用し、一定の人員を常駐させるような契約を結んでいる。世界中に拠点を持つ総合商社ですらコンサルに頼る時代に、銀行やメーカーなどが自社リソースと気合いだけで乗り切ろうと考えるのはナンセンスだろう。

コンサル業界

トップ層はさらなる狭き門を求める

ポスト・コンサルの転職が本番の勝負

人気絶好調のコンサル業界だが、業界全体の採用数の増加は希少価値の減少にもつながる。現にBCGなど一部の戦略系ファームは質より量の大量採用方針に切り替えており、BCG出身だからと言ってひと昔のように魅力的なキャリア機会を得ることは難しくなってきている。(業界の一部では人材の質の低下を揶揄してバ〇・コンサルティング・グループと呼ばれているようだ。。)

トップofトップの学生にとってはすでにコンサル業界はゴールではない。むしろ、就活の終了と同時に転職先を考えるという意味でスタート地点になっている。時代によってポスト・コンサルの人気キャリアは変化するが、足元ではPEファンドや上場前のベンチャーのCOOなどがトップ層の競争のフロンティアになっている。

アップサイドを得るためには狭き門から入る

時代の変化とともに人気業界は変わるが、一般論としてキャリアのリターンを高めるために大事なことは「狭き門より入る」ことだろう。ひと昔前であればゴールドマン・サックスの戦略投資部門(ASSG)がトップに君臨しており、当時のASSG出身者は今ではヘッジファンドや外資系のPEファンドなどで活躍している。

世界的なPEファンドであるベインキャピタルはマッキンゼーやBCGのトップ3%のみを採用すると公言していおり、同業のブラックストーンではアナリストの採用率が0.6%(14,906人の応募に対して採用は86人)だと公表されている。

Blackstoneの採用

結局のところ仕事の待遇は常に需要と供給できまるため、いかに魅力的に見える仕事であっても、自分と同じことをしている人が多い状況では高いリターンは望めない。サラリーマン(雇われ人)としてアップサイドを狙う限り、その時代ごとの「狭き門」を正確に捉え、あらゆる手を使ってそこに潜りこむ努力が欠かせない。BCGの内定をもらって一息ついているでは先は長い。

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