ねずみ講モデルのコンサルファームは成長のジレンマを抱える

戦略系のファームは成長を求めて総合系の領域に進出した

コンサルティング業界はマッキンゼー、BCG、ベインなどに代表される「戦略系ファーム」とアクセンチュア、PwC、デロイトなどの「総合系ファーム」に分かれていたが、近年ではその境界が曖昧になっている。

総合系ファームが戦略部門を内製化したことに加え、戦略系ファームの中でも成長を求めてオペレーション系のプロジェクトを増やす動きが起きている。

比較軸戦略系総合系
トピック全社の戦略や方向性オペレーション改善
カウンターパートCEO/経営陣部門長など
チーム体制少人数大人数
プロジェクト期間短期間(3~6か月)長期間
ソリューションプロジェクトごとに個別性の高いアイデアやフレームワークパッケージ化されたソリューション(ソフトウェア導入など)
代表的な会社マッキンゼー、BCG、ベインアクセンチュア、PwC、デロイト

コンサルティング業が陥る成長のジレンマ

規模拡大の弊害が生じ始めている

戦略系のファームが成長を維持するためには同じクライアントからの継続受注を増やし(案件の長期化)、かつ1つのプロジェクトにチャージする人数を増やす(案件規模の拡大)ことが必要になる。これはまさに総合系のファームがこれまでやってきたことであり、戦略系のファームが総合系の領域に進出するのは必然だった。

戦略系のファームがオペレーション系の案件を増やすことには賛否両論あるが、少なくとも今からその業界に入ろうとしている人や既に業界にいる若手にとってはネガティブに映るだろう。

オペレーション系の案件はパッケージ化されたソフトウェアの導入などが多く、ゼロから戦略を考えるプロジェクトより知的刺激に欠けるかもしれない。また、規模拡大によって採用数が増え、転職市場での希少価値が下がることもある。

コンサルティング・ファームはパートナーによるピンハネ構造

ではそもそも無理な成長を追い求めなければいいだろうと考えることもできるが、実はそれは非常に難しい。なぜなら、コンサルティング・ファームの本質は成長を前提として成り立つ「ねずみ講」ビジネスだからだ。

コンサルティング・ファームの構造は単純化すると案件を取ってくるパートナーと案件を回すアソシエイトから構成される。アソシエイトは固定給で働いて案件を回すことでクライアントからフィーをもらい、アソシエイトのフィーと給料の差分がパートナーの取り分となる。

パートナーは案件を回すことなく利益を得ることが出来るが、それは案件を獲得したからだ。一般に商材が高額の無形商材であるほど営業の難易度が高いが、コンサルティングという商材は最も売りづらい商材の一つだ。

パートナーはあらゆる手を使ってコンサルティングという高額商材を売る代わりに、実際に手を動かしてプロジェクトを回しているアソシエイトからフィーの一部をピンハネする。アソシエイトは嫌なら独立して自分で売ることのも自由だが成功例は極めて少ない。

ピラミッド構造

搾取を支えるねずみ講モデル

上記は極めて単純化したコンサルティング・ファームの構造だが、現実にはさらに厄介なことが起きている。まず、アソシエイトのフィーと給料の差分は非常に大きい。マッキンゼーやBCGなどの大手ファームではクライアントが払うフィーのうち給料で支払われるのは数十%にすぎない。

残りはファームのインフラ維持費やリサーチ費用にも使われるが、大半はパートナーの給料になる。アソシエイトは自分が出した付加価値のうち大半をピンハネされ、パートナーを食わせるために激務をこなす。なぜか?それは自分がパートナーになったときに美味しいことを知っているからだ。

つまり、コンサルティング・ファームはねずみ講ビジネスと同じ構造で成り立っている。アソシエイトが少ない取り分で身を粉にして働くのは「自分も頑張ればいつかパートナーになって搾取側に回れる」という強力な前提条件があるからだ。

営業力の源泉はブランド力

もちろんアソシエイトとして必死に働いてもパートナーになれる保証はない。ねずみ講が成り立つためにはピラミッド構造が必要であり、昇進には競争がつきものだ。また、案件を回す立場から営業して案件を取る立場に変わるときにうまくシフトできる保証はない。

しかし、ここにも実はからくりが隠されている。たしかに営業は個人のセンスによる部分が大きいが、パートナーという肩書が営業力を一定程度押し上げてくれる側面もある。例えば「マッキンゼーのパートナーの〇〇です」と言えばそれだけで話を聞いてみようとなる経営者は多い。これはマッキンゼー自体に圧倒的なブランドがあるからだ。

つまり、パートナーになることはそのファームがこれまで培ってきた強力なブランドを名乗れることを意味する。アソシエイトからパートナーへのシフトの本質は、単なる役割のシフトではなくブランド価値の貸与にある。

ねずみ講モデルは成長を前提として成立する

まとめると、コンサルティング・ファームは案件を回してパートナーを食わせるアソシエイトと、ファームのブランドを借りて案件を獲得する代わりにアソシエイトが生み出した付加価値をピンハネするパートナーによって構成される。

アソシエイトがピンハネ構造を甘んじて受け入れるのは将来の昇進によって(一定確率で)自分もパートナーの輪に入り美味しい蜜を吸えるという期待があるからだ。そして、この構造は他のねずみ講モデルと同様に組織の成長を前提に成り立っている。

パートナーという特権階級は一度なると自ら辞める人は少ない。労働環境も悪くないため体力が落ちる40代・50代になっても続けられる。パートナーの席は空きづらいのだ。アソシエイトに夢を見せて働いてもらうためには席をパートナーの席を増やす必要があり、そのためにはファーム全体の規模拡大が不可欠だ。

コンサルティング・ファームが成長を止められない理由はこのような構造にある。国内のコンサルティング需要は構造的に成長しており、しばらくは各社ともに成長が続くだろう。様々な成長の弊害を乗り越えてねずみ講モデルを維持することは出来るのか、今後の動向に注目したい。

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