コンサル業界は戦略系と総合系の差が曖昧になっていく

戦略コンサルと総合コンサルは別物だった

扱う案件の領域が違う

コンサルティング業界は扱う案件の領域の違いから一般に「戦略系」と「総合系」の2つに分類される。全社はマッキンゼー、BCG、Bainなど、後者はアクセンチュアやPwC、デロイトなどが含まれる。

戦略系のコンサルティング・ファームは主に大企業のCEOやそれに準ずる立場の経営陣に対して全社の経営戦略に関するアドバイスを提供する。プロジェクトは少人数・短期間(3~6か月)で、具体的なソリューションよりも会社の向かうべき方向性について議論をするものが多い。

一方、総合系のコンサルティング・ファームはクライアント企業の部門長などから発注を受け、企業の日々のオペレーションを改善するための実行支援を提供する。ソリューションはソフトウェアの導入などパッケージ化されたものが中心で、ゼロからアイデアを考えることが少ない。プロジェクトは大人数・長期間になる傾向がある。

このように、同じコンサルティング業界の中でも戦略系と総合系では仕事内容が全く異なる。改めて下記の表に違いをまとめている。

比較軸戦略系総合系
トピック全社の戦略や方向性オペレーション改善
カウンターパートCEO/経営陣部門長など
チーム体制少人数大人数
プロジェクト期間短期間(3~6か月)長期間
ソリューションプロジェクトごとに個別性の高いアイデアやフレームワークパッケージ化されたソリューション(ソフトウェア導入など)
代表的な会社マッキンゼー、BCG、ベインアクセンチュア、PwC、デロイト

単価と人材の質の差が大きい

コンサルティング業は資格が必要なく参入障壁も低いため、誰でもコンサルタントを名乗ることが出来る。極端な話だが、トヨタの国内販売戦略を支援するBCGも、中小企業の楽天市場出店を支援する船井総研も同じコンサルタントだ。

コンサルティング業界の中で会社の「格(Tier)」を一番わかりやすく表すのが単価の差だ。コンサルティング業は人月ビジネスであるため、売上は在籍しているコンサルタントの数×稼働率×チャージ単価で決まる。チャージ単価は同じ業界内でもピン切りであり、例えばマッキンゼーとアクセンチュアでは倍以上の差がつくこともある。

ワンピース 格の違い

単価の差は人材の差につながる。自分がコンサルタントになるなら高い単価でチャージされる方が嬉しいのは当たり前だ。単価が高いということはそれだけクライアントから付加価値が高いと思われてることであり、エキサイティングな仕事を出来る可能性が高い。

そのため、優秀な人はTierの高い会社に集まる。マッキンゼーから内定をもらってアクセンチュアに行く人はいない。この差は転職機会にもあらわれている。例えば外資系PEファンドのベインキャピタルはMBB(マッキンゼー、BCG、ベインの総称)のトップ3%のみから採用すると公言している。

戦略系と総合系は案件の領域を相互に浸食しあっている

総合系が経営陣のBuy-inを求めて戦略系に侵略

従来すみわけがされていた戦略系と総合系だが、近年ではその差が縮まってきている。最初に動いたのは総合系のファームだ。総合系のコンサルティング・ファームは経営陣より少し下の事業部長などを直接のクライアントとして様々なオペレーション系の支援を提供してきたが、そのままではプロジェクトの規模や変革の度合いに限界がある。

そこで総合系のファームは戦略系の部署を社内に作り、上流の経営戦略のレイヤーからクライアント企業に食い込むことで、より大規模なオペレーション案件を獲得しようとした。PwCは戦略系中堅ファームのブーズ(Booz & Company)を買収し、「PwC Strategy &」という部署を作った。

総合系ファームの戦略系部門は少人数で本体と採用を分けているところが多い。仕事内容は戦略系のファームに近いが、建付けとしては総合系の巨大プロジェクトを受注するための営業部隊にすぎない。単体で価値を出しているピュアな戦略系ファームとは歴とした差がある。

巷には聞いてもないのに「アクセンチュアの戦略部門です」と名乗るプライドの高いコンサルタントが散見されるが、本当に能力に自信があるなら黙ってマッキンゼーに行けばよいだけだ。

戦略系は売上拡大を求めてオペレーションに進出

総合系が戦略部門を内製化する中で、戦略系のファームもオペレーション系のプロジェクトを増やした。背景にあるのはコンサルティング業界の成長のジレンマだ。コンサルティング業界は過去数十年間に安定して高成長を続けてきたが、ある程度の規模を超えると戦略系のプロジェクトだけでは成長の維持が難しくなる。

戦略系のプロジェクトは少人数・短期間であるため、いくら単価が高くても売上の絶対額は総合系に比べて小さい。また、新規のプロジェクト受注に数か月間の地道な営業が必要になるため、急激に案件数を拡大することは難しい。

戦略系のファームが成長を維持するためには同じクライアントからの継続受注を増やし(案件の長期化)、かつ1つのプロジェクトにチャージする人数を増やす(案件規模の拡大)ことが必要になる。これはまさに総合系のファームがこれまでやってきたことであり、戦略系のファームが総合系の領域に進出するのは必然だった。

実際に2020年現在、マッキンゼーとBCGの日本オフィスの半数以上はオペレーション系のプロジェクトにチャージされていると聞く。ベインの日本オフィスは戦略比率がまだ高く、リクルーティングの口説き文句に使っているようだが、ファーム自体の戦略としてどちらが正しいかは分からない。

コンサルティング業が陥る成長のジレンマ

戦略系のファームがオペレーション系の案件を増やすことには賛否両論あるが、少なくとも今からその業界に入ろうとしている人や既に業界にいる若手にとってはマイナスになるだろう。

オペレーション系の案件はパッケージ化されたソフトウェアの導入などが多く、ゼロから戦略を考えるプロジェクトより知的刺激に欠けるかもしれない。また、規模拡大によって採用数が増え、転職市場での希少価値が下がることもある。

ではそもそも無理な成長を追い求めなければいいだろうと考えることもできるが、実はそれは非常に難しい。コンサルティング・ファームの本質はねずみ講ビジネスであり、組織の成長を止めることは死を意味する。

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