【就活・転職】コンサルの面接で使われるフェルミ推定は地頭の良さを正しく評価できない

フェルミ推定は地頭力を評価するための面接手法

フェルミ推定は論理的な概算

フェルミ推定は実際に調査するのが難しいような数量を、いくつかの仮説を立てながら論理的に、かつ短時間で概算することを指す。代表的な問いとしては「シカゴにいるピアノの調律師の人数は?」「都内のマンホールの数は?」などがあり、スマホなどで調べることなく5分程度で数字を推定する必要がある。

「フェルミ推定」という名前は1983年にノーベル物理学賞を受賞した物理学者のエンリコ・フェルミ(Enrico Fermi)氏がこの種の概算を得意としていたことに由来する。

フェルミ推定はGoogleの入社試験に使われたことで有名になった

フェルミ推定の考え方時代はこの名前がつく前からビジネスやアカデミックの世界で当然のように使われていたが、「フェルミ推定」という概念が世の中に広まったのはGoogleが採用面接に導入したことがきっかけだと言われる。

Googleは世界中の優れた頭脳を集めて画期的なITサービスを次々に生み出してきた会社であり、「Google式の〇〇」系の本はマッキンゼー本と並んで常に本屋のトップピックに並べられている。

フェルミ推定はコンサル業界に幅広く普及

コンサルティング業界の採用は地頭偏重

フェルミ推定が世の中に認知されると外資系企業を中心に面接に取り入れる企業が増えたが、中でもフェルミ推定を積極的に採用したのが社員の「地頭力」を重視するコンサルティング業界だ。

マッキンゼーが「発明」した現代的経営コンサルティングの手法は、特定の業界での長い経験や知識を持たない若者であっても、その道のプロであるクライアント企業に対して有意義なアドバイスを提供できる点で画期的だった。なお、依然のコンサルタントは「グレイ・ヘア」と呼ばれ、個人に蓄積された圧倒的な事業経験をもとにアドバイスを行う顧問のような存在だった。

現代的コンサルティングにおいて、コンサルタントに求められるのは全くの素人な分野においても早期にキャッチアップし論理的に示唆(インサイト)を導き出すための「地頭力」であり、フェルミ推定はこれと非常に相性がいいと思われた。

フェルミ推定の考え方はコンサルタントの日々の仕事でも活用される

コンサルティング業界の採用面接でフェルミ推定が頻繁に使われるもう一つの理由は、彼ら自身が普段の仕事の中でフェルミ推定の考え方を多用しているからだ。

クライアント企業からコンサルタントに課される問いはGoogle検索しても出てこないような難易度の高い問題であり、市場規模推定はその1種だ。例えば、新しい業種に新規参入を考えているクライアント企業から、その市場のマーケットがどの程度あって、今後5年間でどう変化するかを教えてほしいと頼まれることがある。

また、クライアント企業に直接頼まれなくても、クライアント企業の経営戦略を考える過程で様々な市場の数字を推定する機会がある。ググればすぐに分かる数字もあるが、データがないからと言って議論をストップしていては仕事にならない。コンサルタントは日常的にBack-of-the-envelope(封筒の裏)の計算をしながら仕事を進めている。

フェルミ推定で地頭力を正しく評価することは難しい

Googleはフェルミ推定をやめた

これは衝撃の事実だが、自社の採用試験にフェルミ推定を最初に活用し世の中にフェルミ推定という概念を広めたGoogleは、今ではフェルミ推定を面接で使っていない。

2013年6月のニューヨークタイムズの取材で、当時のGoogleの人事担当のシニア・ヴァイス・プレジデントを務めていたラズロ・ボック(Laszlo Bock)氏はフェルミ推定は無意味だと答えている。

We found that brainteasers are a complete waste of time. They don’t predict anything. They serve primarily to make the interviewer feel smart.

In Head-Hunting, Big Data May Not Be Such a Big Deal – The New York Times

フェルミ推定では面接官が誤った評価方法を用いているケースが多い

フェルミ推定がキャンディデートの地頭の良さを正しく評価できない要因は、面接官がフェルミ推定を行う際に間違えた評価方法を使っていることが挙げられる。

本来、フェルミ推定は限られた情報の中で様々な仮説を立てて思考を進める「過程」を評価するべきものだが、多くの面接官はフェルミ推定の結果出された数値の正しさで評価してしまっている。もちろん結果の数字が正解に近いことは大事だが、そのバイアスが強くかかりユニークな発想や論理力を軽視してしてしまうケースが多いようだ。

フェルミ推定の誤った対策方法が蔓延

フェルミ推定を受ける側でも誤解が蔓延している。フェルミ推定の本としては「東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート」という本が有名で、コンサル業界志望者の大半がこの本を読んでいるようだが、内容を鵜呑みにするのは危険だ。

この「東大生が書いた」シリーズは「東大ケーススタディ研究会」が著者になっているが、著者の個人名は明かされていない。同書の出版当時に外資系のコンサルティング会社や投資銀行から内定をもらった複数の現役大学生が書いたものだが、彼らがどの程度優秀か、フェルミ推定やケーススタディが本当に得意だったのか(もしくは単純に人柄やノリで内定を取ったのか)は分からない。

また、近年増加している就活生向けの「選抜コミュニティ」の一部では、コンサル業界志望の学生に対して「フェルミ推定は答えをプラスマイナス3倍の範囲で当てることが重要だ」と指導をし、さらには国内のコンビニ店舗数や電柱の数など、出題頻度の高いテーマを丸暗記させている。

このような本質を履き違えた指導や対策情報が出回っていることは、フェルミ推定で本来の地頭力を評価することを困難にするだけでなく、本来は面接に受かっていたはずの人が間違えた情報を信じた結果落ちてしまうという不幸にもつながる。

コンサル業界ではより複雑なケース面接が利用される

フェルミ推定よりも地頭を評価しやすい

上記のようなフェルミ推定の問題点を踏まえ、コンサルティング業界では数字の推定にとどまらない「ケース面接」の採用が増えている。限られた情報の中で仮説ベースで思考を進める点はフェルミ推定と同じだが、ケース面接の場合は「この企業はどうするべきか?」「この商品が売れているのはなぜか?」など、よりバリエーションに富んだ出題が可能になる。

また、ケース面接と合わせてフェルミ推定を用いるケースも多く、例えば「日本国内で宅配便の再配達によって掛かっているコストはいくらか?」というフェルミ推定の問題を出した後に、「ではそのコストを削減するために政府は何ができるか?」といったケース面接に発展させることが出来る。

次々と編み出される対策と面接官のイタチごっこ

フェルミ推定に比べて複雑性の増すケース面接だが、何としても面接に受かりたいという強いニーズに答えて日々新しい攻略法が考え出されている。例えば典型的なケース問題をいくつかの類型に分けて、それぞれのパターンごとに答え方のテンプレートを作るような業者もいる。

面接官も対策されにくい問題を日々考えており、このイタチごっこはこれからも続くだろう。ただ、その対策法がチートやテクニックでない限り、本番の面接に備えて練習を積むことは頭の体操としては悪いくないだろう。(決して地頭を鍛える効果はないだろうが)

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