金融キャリアはセルサイドからバイサイドへの転職が王道コース

バイサイド・キャリアの人気は高い

労働時間の短さやアップサイドの大きさが魅力

金融業界ではセルサイドとバイサイドという区分が一般的に用いられる。セルサイドは事業会社や機関投資家に対してサービスを提供する顧客商売なのに対して、バイサイドは年金基金などから集めた資金を運用して投資リターンに応じてフィーを受け取る。

このようなビジネスモデルの違いから、セルサイドとバイサイドのキャリアでは下記の表のような差が生じている。バイサイドは比較的短い労働時間で高いアップサイドを得られる一方、雇用の安定性や業界全体での採用枠の多さではセルサイドが優れている。

評価基準セルサイド(投資銀行)バイサイド(投資ファンド)
労働時間顧客の要求水準が高く、労働時間が長期化する傾向にある突発的に増えることはあるがセルサイドのサポートを受けられるため平均すると短い
給料事業会社やコンサルに比べて高いがアップサイドは限定的高いベース給に加えてリターン次第でアップサイドが大きい
雇用の安定性厳しい営業ノルマが課せられるシニア職になるまでは比較的安定個人の成果やファンド全体の成果によっては解雇リスクが存在する
採用数業界全体の人数が多く離職率も高いため採用数は安定している業界全体の人数が少なく離職率も低いため業界外からの採用数は少ない

投資業の面白さ

ワークライフバランスやボーナスのアップサイドなどの条件面に加えて、投資業の面白さもバイサイドのキャリアの人気の理由になっている。投資銀行では顧客である投資ファンドのサポートとして大量の資料作成やロジ周りのサポートをするが、自らが投資の意思決定をすることはない。

投資ファンドの仕事は究極的には意思決定であり、その他の業務は外注することが出来る。欧州系PEファンドのペルミラなどでは財務モデルの作成まで投資銀行に外注し、少数精鋭のファンドメンバーは重要な会議や意思決定に集中する体制を敷いている。

「一度バイサイドに来るとセルサイドには戻れない」という気持ちはバイサイドに転職した人であれば誰もが共感するだろう。投資銀行以外でも三菱商事などの総合商社で事業投資の経験を積み、投資の魅力を感じてPEファンドに転職する人も少なくない。

セルサイドはバイサイドへの登竜門

バイサイドのは原則的に新卒採用を行わない

金融業界の人間であれば誰もが憧れるバイサイド(投資ファンド)だが、ほとんどのファンドは新卒採用をしていない。PEファンドの場合は投資銀行(特に投資銀行部門)や戦略コンサルティングファーム・商社、ヘッジファンドの場合は投資銀行(特にリサーチ部門やトレーディング部門)から採用することが一般的だ。

投資ファンドでは金融分野における高度なスキルや経験が求められるため、新卒の学生を採用するのではなく、投資銀行で厳しい修行に耐えてスキルを身につけた若手のうち優秀層のみを投資ファンドが採用するという構図になっている。

セルサイドで必要なスキルセットが身に付く

バイサイドへの転職前にセルサイドのキャリアを挟む人が多い理由の一つは、そこで十分なスキルセットを身につけることが出来るからだ。ファンドは投資銀行の主要な顧客であるため、日々さまざまな要求に応える中でファンドが求めるスキル(特に財務系のハードスキル)が自然と身に付く。

PEファンドはM&Aのディールにおいてリテインしている投資銀行に様々な仕事を依頼する。また、ヘッジファンドは投資銀行のリサーチ部門と日常的に意見交換をして優良な投資テーマを見つける。

ファンドが投資銀行の若手を青田買い

ウォール街ではPEファンドによる投資銀行のアナリストの青田買いが加速しており、大学を卒業してゴールドマン・サックスなどの投資銀行に入社すると半年ほどでPEファンドのリクルーターから声が掛かり、「IBDで客の靴を舐める仕事に嫌気が刺したらウチに来たらどうだ」と甘い誘惑を受ける。

日本よりプロフェッショナル系のキャリアパスが確立しているアメリカやイギリスでは、大学卒業後に投資銀行で2年間働き、PEファンドに転職してまた2年働いたあとにMBAを挟み、PEファンドまたはヘッジファンドに戻るというコースがTypicalなエリートキャリアだと言われている。

MBAを挟むのは、グローバルの大手PEファンドではシニアになるためにハーバードやスタンフォードなどのトップ校のMBAの取得が必須であるためだ。もちろんMBAの学費はファンドが出してくれる。

終わらない競争と椅子取りゲーム

投資銀行に入社する学生のほとんどが2年後にPEファンドに転職することを目指しており、PEファンドを専門でカバーしてM&Aや買収ファイナンスのサポートをする「スポンサー・グループ」という部門が一番人気になっている。金融機関のM&Aや社債発行に携わるFIG(Financial Institution Group)など、PEファンドへの転職に不利な部門は人気がない。

新卒のアナリストは入社後に数か月~半年間のニューヨーク研修に行き、そこでの成績によってその後の配属先が決まるため、学生時代からモデリングなどを必死に勉強して研修に備える人もいる。

投資銀行への内定は将来のキャリアの成功を約束する「ゴールデン・チケット」と呼ばれたが、現実には終わりなき競争のスタートポイントに立ったに過ぎない。人間の欲望がある限り、金融業界の椅子取りゲームは終わらない。

シェアする

error: