生命保険業界では乗合代理店チャネルが今後も成長していく理由

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保険の販売代理店はとにかく儲かる

生命保険は車や家と並んで「一生に一度の買い物」と言われ、家庭や職場に「生保レディ(生保おばちゃん)」と呼ばれる生命保険会社の専属営業職員が通いながら売るスタイルが主流だった。この業界常識を打ち壊して急成長してきたのが保険の販売代理店という業態だ。

最大手のほけんの窓口グループ(非上場)は2019年6月時点で全国に742店舗の来店型保険ショップを展開する。107万人の契約者を抱え、売上420億円・営業利益83億円(営業利益率は20%)を稼ぎ出す。

保険の販売代理店はとにかく儲かる。業界首位のほけんの窓口の決算書を見ると明らかだ。売上は2019年度時点で420億円、平均すると年率2桁で急成長している。

ほけんの窓口グループのロゴ

営業利益は2019年度で83億円、売上高営業利益率は20%という高い収益力が見て取れる。

生命保険は30兆円以上の巨大市場

保険代理店の高収益の背景にあるのは巨大な保険市場だ。保険には一般的に生命保険(生保)と損害保険(損保)の2種類が存在するが、生命保険の市場規模は30兆円以上、損害保険の市場規模は約8兆円にのぼる。

特に生命保険の市場は巨大で、GDPの13.5%に相当する。日本は「生命保険大国」と呼ばれ、歴史的には戦後に夫を失った女性を生命保険会社が大量に雇用し、各家庭を訪問して生命保険を販売するという「生保レディ(生保おばちゃん)」スタイルを築き上げたことが背景にあると言われている。

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保険代理店のビジネスモデル

保険代理店のビジネスモデルは至ってシンプルだ。代理店の収入は保険の契約を獲得したときに保険会社から支払われる手数料報酬によって成り立っている。

保険代理店は保険の加入者から一切の料金を受け取らない。代理店各社は「無料相談」を掲げて保険に新規加入や見直しに関心のある人々を集客する。同時に、代理店は保険会社各社と販売(保険の世界では「募集」と呼ぶ)の委託契約を結び、来店したユーザーに適した保険を紹介する。

保険代理店の仕組み

保険代理店が支持される理由は「比較可能性」

加入者にとってのメリットは比較可能性だ。例えば、日本生命の専属営業職員は日本生命の保険商品しか売ることが出来ない。もちろん、加入者の状況をヒアリングしたうえで自社の商品の中から最適なものを提案するが、もし競合のオリックスの商品が一番いいと思ってもそれを紹介することはない。

一方、ほけんの窓口に代表される保険代理店では複数の保険会社の商品を同時に比較することが出来る。契約者は幅広い選択肢の中から、自分に最適なプランを選ぶことが出来る。また、販売員も特定の保険会社の専属ではないため、原則的には(重要)特定の保険会社や保険商品に偏らず、契約者目線で最も良いプランを推奨することが出来る。

保険の代理店市場は今後も成長が予想される

日本の生命保険市場は依然として合理化の余地が大きい

複数の保険会社の商品を取り扱う代理店は「乗合代理店」と呼ばれ、1996年に解禁された。それ以来、保険代理店は巨大な保険市場の利益プールの一部を奪う形で成長してきた。生命保険文化センターの調査によると、2018年度の生命保険の新規獲得件数のうち18%が保険代理店から流入しており、2006年度の7%から大きな伸びを見せている。

年度2009201220152018
保険会社の営業職員68.1%68.2%59.4%53.7%
保険代理店6.4%6.9%13.7%17.8%
通信販売8.7%8.8%5.6%6.5%
生命保険文化センター

生命保険の販売チャネルは大きく分けて「直販」「代理店」「銀行」「デジタル」の4種類が存在する。日本では歴史的背景もあり、「直販」の割合が圧倒的に多い。欧米では独立系の代理店やブローカー経由での加入が一般的な中で、日本の新規加入の約5割は直販チャネル、つまり日本生命などの保険会社のセールスパーソンから来ている。

欧米との単純比較で考えても、日本の生命保険市場はまだ合理化の余地が大きい。保険加入者のボリュームゾーンは結婚や出産を控える30代だが、若年層を中心にあらゆるものをネットで比較することが当たり前になる中で、保険の大半が独立系の代理店経由で契約されるようになる未来はそう遠くないと思われる。

生命保険から代理店に支払われる手数料は高騰している

代理店経由の新規契約が増えるに従い、生命保険会社にとって代理店チャネルは無視できない存在になった。生命保険は単価が高く利幅も高い一方、契約の獲得の難易度が高い。これまでの生命保険会社は自社で大量の営業職員を抱え、歩合制の給与体制を敷くことで販売効率を高める努力をしてきた。

保険加入のチャネルシェアが直販から代理店に移る中で、保険会社側も予算の組み方を再考せざるを得なくなった。自社の営業職員の給料・ボーナスとして使っていた予算を、自社の保険商品を販売してくれる代理店への販売手数料(コミッション)へ振り替える動きが加速している。

保険会社は代理店に自社の商品をより優先的に販売してもらうために高い手数料を設定しようとする。単純な手数料率以外にも、一定期間内の販売額が目標値を上回ると手数料が跳ね上がる仕組みが用いられるなど、保険会社は様々な工夫を凝らしている。

生命保険業界と販売代理店は構造的な利益相反を抱える

代理店への手数料の値上げ競争により、一部の代理店では顧客の意向を無視した販売(保険の場合は「募集」と呼ぶ)が横行しており、金融庁は監視を強化している。

乗合代理店は複数の保険商品の商品を比較し、顧客にとって最適な保険商品を紹介することに価値がある。行き過ぎた手数料競争によって、代理店の本来の価値が損なわれることは、業界の健全な成長を阻害する要因になりうる。

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