生命保険

表には出ない保険ショップと生命保険会社の資本関係

生命保険業界で高まる代理店チャネルの重要性

生命保険業界は販売力の勝負

国内の生命保険市場は年間の保険料収入ベースで30兆円以上の市場規模を誇り、日本は「生命保険大国」と呼ばれる。生命保険は契約そのものが商品である「無形商材」だが、その内容(「約款」)を自分で読む契約者は少ない。

商品の複雑性や情報の非対称性は消費者自身による商品の横比較を困難にし、生命保険市場は商品力より販売力の競争になっている。20世紀の生命保険各社は「生保レディ」と呼ばれる自社の専属営業職員を大量に雇い、縁故を中心とした販売網を構築してきた。

https://money-alpha.jp/hoken/role-of-life-insurance/

複数の保険を横比較できる保険代理店チャネルが成長

1996年の規制緩和以降、複数の保険会社の商品を横比較して最適な保険商品を選択できる「乗合代理店」と呼ばれる形態が急成長した。

代理店のチャネルシェアが高まるに従い、保険会社の販売戦略も見直しを余儀なくされた。これまで自社の専属営業職員に払っていた販売費の一部を、自社の商品を販売してくれる代理店への販売手数料に置き換える流れが続いた。

生命保険会社による保険ショップへの出資・買収

生命保険の新規加入チャネルが保険会社の専属営業職員から乗合代理店へと移るなか、保険会社は独立系の保険代理店を相次いで傘下に収めようとした。

2015年5月、日本生命がライフサロンを買収し、保険会社による乗合代理店の買収の第1号案件となった。その後、住友生命や第一生命など他の生命保険会社も代理店への出資や買収に動いた。

出資者出資先時期備考
住友生命ほけんの窓口グループ2013年10月約7億円を出資(発行済株式の8%)
日本生命ライフサロン2015年5月買収
日本生命ライフプラザパートナーズ2015年11月3.8億円を出資(発行済株式の68.6%)
住友生命保険ひろば2016年10月山口FGと共同買収
日本生命ほけんの110番2017年4月買収
住友生命保険デザイン2017年8月買収
住友生命保険ほっとライン2018年1月出資(発行済株式の30%)
第一生命アルファコンサルティング2018年4月買収
日本生命ライフル保険相談2018年9月買収
オリックス生命ライフアシスト2020年2月買収

住友生命による「ほけんの窓口グループ」への出資

ほけんの窓口グループ ロゴ

「ほけんの窓口グループ」は乗合代理店最大手で、当時450店舗(フランチャイズチェーンを含む)を展開していた。同社は業界の成長を牽引する形で店舗網を急拡大させており、住友生命の出資によって調達した資金は新規出店費用に充てられた。

2013年10月、第三者割当増資により住友生命が約7億円を出資した。「ほけんの窓口」では損害保険の募集も行っており、あいおいニッセイ同和損保が8.5%出資している。

日本生命による「ライフサロン」の買収

「ライフサロン」は首都圏や京都、北海道などに当時約50店舗を展開していた独立系の保険ショップであり、2015年5月に日本生命が発行済株式の9割を約10億円で取得して子会社した。

その後、2015年7月には日本生命とニトリHDの提携が発表され、ニトリ店内に「ニトリのほけん+ライフサロン」という保険代理店を設置し共同運営することが決まった。

家具・インテリア大手ニトリに来店する客の多くは、結婚や出産などのライフイベントを迎えるため生命保険の加入ニーズがあり、共同運営による高いシナジーが期待された。

日本生命による「ライフプラザパートナーズ」の買収

ライフプラザパートナーズ 日本生命 ロゴ

「ライフプラザパートナーズ」は株式会社ライフプラザホールディングス(現ほけんの窓口グループ株式会社)の一部門として2006年に設立され、2008年7月に独立した。

その後、2015年11月に日本生命が3.8億円を出資し発行済株式の68.6%を取得したことで、日本生命の子会社となった。

住友生命による「保険ひろば」の買収

保険ひろば 山口フィナンシャルグループ 住友生命 ロゴ

「保険ひろば」は中国・九州地方を中心に当時52店舗を展開していた保険ショップであり、山口フィナンシャルグループ(FG)が子会社の「ワイエムライフプランニング」を通じて買収した。本件は山口FGとの共同買収で、山口FGが発行済株式の90%、住友生命が10%を保有する。

山口FGは経営戦略の中でライフプランニング事業の強化を打ち出しており、今回の買収もその一環だ。「ワイエムライフプランニング」は山口FGと住友生命が2016年6月に共同で設立した金融商品販売会社であり、両社はライフプランニング領域において協力関係にある。

日本生命による「ほけんの110番」の買収

ほけんの110番 日本生命 ロゴ

「ほけんの110番」は九州を中心に全国で約90店舗の保険ショップを展開している。買収当時は業界6位で、年間の手数料収入は約50億円と言われている。

日本生命は「ほけんの110番」の創業者から全株式を買い取り、買収額は数十億円と言われる。20~30代の顧客を多く抱える保険ショップを傘下に収めることで、手薄だった若年層との接点を強化する狙いがある。

住友生命による「保険デザイン」の買収

保険デザイン 住友生命 ロゴ

「保険デザイン」は関西に(当時)20店舗を展開する保険ショップであり、住友生命が2017年7月に買収した。買収金額は約30億円と言われる。

住友生命は子会社の保険ショップ「ほけん百花」を子会社に持っており、首都圏を中心に展開している。「保険デザイン」の買収によって関西地方の販路を拡大することが狙いだ。

住友生命による「保険ほっとライン」への出資

保険ほっとライン 住友生命 ロゴ

「保険ほっとライン」は当時97店舗を展開する業界5位の保険ショップであり、「保険ほっとライン」を運営するマイコミュニケーション株式会社の発行済株式の3割を住友生命が取得した。

第一生命による「アルファコンサルティング」の買収

アルファコンサルティング 第一生命 ロゴ

アルファコンサルティングは名古屋市に本拠を構え、関西地方を中心に全国22か所の営業拠点を展開する訪問型代理店だ。第一生命による買収額は公表されていない。

顧客接点の多い訪問型代理店を買収することで顧客ニーズの変化を素早く掴み、商品開発や営業戦略に活かすことを目的としている。

日本生命による「ライフル保険相談」の買収

ライフル保険相談 日本生命 ロゴ

「ライフル保険相談」は当時国内最大級の代理店比較サイトであり、運営会社のライフルフィンテックは日本生命に買収された。

「ライフル保険相談」は全国各地の代理店の情報を保有しており、日本生命はその情報を活用して代理店向けの商品開発や代理店営業の効率化を進めることを計画していた。

オリックス生命による「ライフアシスト」の買収

保険のライフアシスト オリックス生命 ロゴ

「ライフアシスト」は新潟県や北関東エリアを中心に12店舗を展開する来店型保険ショップ「保険のライフアシスト」と、訪問型募集人が所属する9つの支社からなる。オリックス生命が「ライフアシスト」の株式の80.9%を取得することで子会社化した。

オリックス生命はもともと代理店チャネルに強みを持っていたが、「ライフアシスト」の買収によって代理店運営のノウハウを取り入れ、代理店チャネルのさらなる開拓を目指す。

生命保険市場は販売力が命

上記のまとめから分かるように、一般的に知られている大手の保険ショップチェーンのほとんどが生命保険会社からの資本注入を受けている。資本関係があるから親会社の保険商品を優先して売るかどうかは分からないが、少なくとも上記の保険ショップに訪問した顧客は日本生命や住友生命などの子会社だとは知らない人が多いはずだ。

https://money-alpha.jp/hoken/life-insurance-channel/

もう一つの観点は、保険ショップは売却しやすいという考え方だ。上位10社に入れば確実に売れるが、12店舗を運営していた「ライフアシスト」がオリックス生命に買収された案件などを見ると、小規模でも保険が「売れる」店であれば大手生命保険会社に売却できると考えることもできる。起業のアイデアとしてどうだろうか。

さらにステップバックすると、保険ショップが買われる理由は、結局のところ生命保険は「売れる」こと、つまり販売力が一番大事だという点に帰着する。下記ページにある通り保険商品はそもそも差別化が難しく、かつ各社は意図的に商品を複雑にして、商品力の勝負から販売力の勝負へと戦いのフィールドを誘導している背景がある。

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