生命保険

生命保険市場は営業力がすべて(直販/代理店営業)

日本は生命保険大国

保険料収入ベースで30兆円以上

日本国内の生命保険市場規模は、年間の保険料収入ベースで約35兆円と言われる。国内の他業種の市場規模を見ると自動車が約60兆円、建設が約50兆円、医療が約40兆円、不動産が約40兆円、外食が約25兆円と続き、生命保険市場の存在感の大きさが際立つ。

生命保険は典型的な「サブスクリプション型商品」であり、1度加入すると基本的には保険料を40年間払い続けてくれる。人口減で新規加入が徐々に減ることを考慮しても、技術革新に脅かされている自動車産業などと比べると国内生命保険市場はしばらく安泰だろう。

https://money-alpha.jp/hoken/role-of-life-insurance/

全世帯の9割が保険に加入

日本の生命保険市場のもう一つの特徴は世帯加入率の高さだ。生命保険文化センターの調査によると、2018年時点で日本の88.7%の世帯が生命保険に加入している。アメリカの加入率が約60%、イギリスが約30%であることを考えると、日本でいかに生命保険が普及しているかが分かる。

アフラック 生命保険 医療保険

日本は国民健康保険が充実しているため、本来であれば公的医療保険がないアメリカや他の先進国に比べて生命保険の加入率は低くなるはずだ。日本人の多くは必要以上の保険をかけており、海外の保険会社から見ると日本の保険市場はドル箱そのものだ。アヒルのCMで知られる「アフラック」はアメリカの生命保険会社だが、利益の8割を日本で稼いでいるのは有名な話だ。

生命保険は商品力だけでは勝てない

国内の生命保険市場は集約が進まず商品多寡

日本国内で生命保険業(免許制)を営む企業は40社ある。保険商品自体の差別化が難しい中、プレイヤー数の多さは業界全体の課題であり、消費者(保険加入者)からするとどの会社がどんな商品を出しているのか分かりにくい。

「ほけんの窓口」などの乗合代理店(複数の保険会社の商品を扱う代理店)に行くと各社のパンフレットが山積みになっているが、その全てを比較することは現実問題として不可能だ。

保険はそもそも商品の差別化が難しい

そもそも「保険」という商品は、個々人にとっては発生確率の低い偶発的な事象(生命保険では「死」)のリスクを大数の法則によってヘッジするという仕組みであり、そこに諸経費や運用方法などの多少の差があったとしても商品としての本質は変わらない。

誤解を恐れずに言うならば、どの保険会社の商品を買うかはあまり重要でない。「日本生命の医療保険を買うか、オリックスの医療保険を買うか」という問いよりも、「そもそも医療保険が必要か?」「医療保険と就労不能保険のどちらを買うべきか?」という問いが本質的だと思われれる。

保険商品が複雑なのは保険会社の策略

さらに問題なのが、保険会社側が敢えて商品設計を複雑にしようとしていることだ。例えば同業他社と同じようなプランやオプションを違う名前で呼んだり、説明に大量の注意書きを加えることで横比較が非常に困難になっている。

これは携帯や通信回線でも見られる現象で、商品を複雑にすればするほど素人である消費者とプロの業者の間で情報の非対称性が広がり、消費者は自分自身で判断ができなくなる。結果、消費者は業者の営業マンの説明に頼らざるを得なくなり、競争の土台が商品力から営業力へと移行する仕組みだ。

保険という商材は契約そのものが商品であり、本来は消費者が自分で内容を理解して加入すべきものだが、現実には保険の「約款」を自分で読む人はほどんどいないだろう。これは商品を横並びで比較されたくない保険会社の都合で作り上げられた極めて不健全な商慣習だ。

生命保険は対面販売の営業力が基本

日本の保険販売は「生保レディ」スタイルが定着

商品力による差別化が難しい中、保険商品の売れ行きを左右するのは販売チャネルの強さだ。中でも、生命保険会社の専属営業職員の営業力は保険会社の競争力に直結する。

生命保険の販売チャネルは大きく分けて「直販」「代理店」「銀行」「デジタル」の4種類が存在するが、日本ではこの中で「直販」の割合が圧倒的に多い。欧米では独立系の代理店やブローカー経由での加入が一般的な中で、日本の新規加入の約5割は直販チャネル、つまり日本生命などの保険会社のセールスパーソンから来ている。

日本では保険会社が「生保レディ」と呼ばれる女性の専業営業職員を大量に抱え、親戚や紹介で保険を販売するスタイルが一般的だ。この背景には、戦後に夫を失った女性を保険会社が雇用し、生命保険の販売員として教育した歴史がある。

専業主婦が一般的だった20世紀の日本では、夫を不慮の事故でなくした場合に妻や子どもは収入を得ることが出来ない。戦争で夫を失った未亡人が自らの経験を踏まえて語りかけるストーリーは説得力があり、当時の生命保険の販売との相性が非常に良かった。

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生命保険は営業員の信頼で売れる

「生保レディ」以外にもソニー生命やプルデンシャル生命は男性を中心とした強靭な営業部隊を抱えるが、保険を売るために必要な共通要素は営業員個人としての信頼だ。

前述の通り、保険に加入するときに約款の中身を自分で読む人はいない。その代わり、もし何か問題が起きた際には自分の担当の営業職員が全力でサポートしてくれるという安心感がカギになる。

なお、「私が一生面倒を見ます!」と言って契約を取るプ〇デンシャル生命の営業マンは営業ノルマが厳しく平均2~3年で退職してしまうため、同じ営業マンがずっと面倒を見てくれる可能性は実はあまり高くない。

保険の営業職員の給料の高さがすべてを物語る

保険が営業力勝負であることを最も分かりやすく説明してくれるのは保険販売員の給料だろう。保険会社の販売員の給与体系は歩合制(フルコミッション)が一般的であり、毎年の新規獲得契約高によって賞与が大きく変動する。トップセールスになると年収1億円以上を稼ぎ出す人も存在し、不動産営業と並んで歩合制営業職の頂点に君臨する。

保険会社がこれだけの給料を払うのはそれだけ保険を売ることが難しいからであり、販売力が企業の競争力に直結するからに他ならない。一般論として、単価が高い無形商材を扱う業態は「営業」に最も価値があり、給料・賞与もそこに厚く分配される。コンサルティング会社や投資銀行、M&A仲介などがその最たる例だ。

1億円以上の手数料を稼いだ営業マンのみが加入できる団体「MDRT」

保険業界にはMDRT(Million Dollar Round Table)という協会があり、優れた営業実績を上げた営業マンのみが加入することが出来る。入会基準は厳密で、1年間で獲得した保険の初年度手数料が約1億円を超えることが最低条件となる。

さらに、MDRTの中でもCOT(Court of the Table)TOT(Top of the Table)という上位ランクがある。COTの入会はMDRTの3倍(約3億円)、TOTはMRDTの6倍(約6億円)の手数料を稼ぐことが求められる。

MDRT 保険 ロゴ

今後は代理店営業の重要性が増す

業界内で代理店チャネルの影響力が大きくなってきている

歴史的に直販チャネルが中心だった日本の生命保険市場だが、近年は代理店チャネルの台頭が目立つ。業界の競争ルールが変わる中、代理店をうまく活用して新規獲得のシェアを大きく伸ばした例も見られる。

複数の保険会社の商品を扱う代理店は「乗合代理店」と呼ばれ、1996年の規制緩和によって誕生した。生命保険文化センターの調査によると、2018年度の生命保険の新規獲得契約数のうち18%が代理店経由となっており、2006年度の7%から大きな伸びを見せている。

年度2009201220152018
保険会社の営業職員68.1%68.2%59.4%53.7%
保険代理店6.4%6.9%13.7%17.8%
通信販売8.7%8.8%5.6%6.5%
生命保険文化センター

保険の販売代理店が普及した背景には、「複数の保険会社の商品の中から自分に合う最適の商品を選びたい」という消費者のニーズがあった。今後もこの流れは続き、新規契約の大半が代理店経由になる未来はそう遠くないと考えれる。

代理店は全て商品保険を平等に比較することはない

保険の販売代理店は様々な保険会社の商品を横比較し、個々の加入者にとって最適な商品を紹介することが使命だが、実際には全ての保険商品を比較することは難しい。

前述の通り日本には40社の保険会社が存在するため、死亡保険1つを取っても40種類の商品が存在することになる。加えて、商品のプランやオプションは定期的に変わるため、それらすべてを把握し比較の土台に上げることは現実的ではない。

そのため、保険の代理店は各ジャンルにつき3~5個の保険商品を「事前に」ピックアップし、特徴やキャンペーンなどをよく理解したうえで加入者に紹介することが一般的だ。

代理店は「売りやすい商品」を売る

保険の販売代理店の収益構造はシンプルで、契約者からは一切手数料を受け取らない代わりに、保険の契約が成立した際に保険会社から一定の販売手数料を受け取る。手数料率は保険会社や保険商品によってさまざまだが、医療保険の場合は年間保険料の60~100%が一般的だ。(月2,000円の医療保険の場合、2,000円×12か月×60~100%=14,400~24,000円)

代理店は成約しないと手数料収入が入らないため、売りやすい商品を勧めるインセンティブを持つ。手数料率が多少高くても成約率が半分違えば手数料収入の期待値は大きく下がる。そのため、代理店は数多ある保険商品の中から自分が売りやすいと感じる商品を事前にピックして優先的に販売することになる。

代理店営業は人海戦術

保険会社側としては、代理店が売りやすい商品を開発することも大事だが、前述の通り保険商品はとても複雑で、かつ本質的な差別化要素に乏しい。従い、現実的な解決策は保険会社の代理店営業(「ソリシター」と呼ばれる)が代理店を回り、自社の商品の販売方法をレクチャーしている。

代理営業は契約者と直接会わないという点で直販チャネルの営業と異なるが、人海戦術という点は変わらない。全国津々浦々の代理店を回り、飛び込み営業に近い形で自社商品のアピールをする。異業種では医師向けに医薬品を紹介する製薬会社のMRに近いかもしれない。

オリックスは代理店を活用し医療保険を制した

保険代理店は従来の直販チャネルからシェアを奪う形で成長してきたが、代理店を上手く活用することで保険商品の契約数を大きく伸ばすこともできる。

直販チャネルでは自社の営業職員が一人一人と面談をする必要があるのに対し、代理店営業では一人の担当者が代理店をコントロールすることによってその代理店の顧客全体にリーチすることが出来る。つまり、代理店営業は「営業レバレッジ」が効くと言える。

実際に代理店チャネルを有効活用してシェアを大きく伸ばしたのがオリックス生命だ。オリックス生命の医療保険である「新キュア」シリーズは保険の販売代理店から絶大な人気を誇っている。「ほけんの窓口」を訪問して医療保険を紹介してほしいと頼むと高確率で「新キュア」を勧められるので試してみてほしい。

オリックス生命 新キュア
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