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資産1000億円の連続起業家・山田進太郎のメルカリ創業秘話

日本を代表する起業家、山田進太郎

メルカリの創業者として知られる山田進太郎氏は、フォーブスによると2019年3月時点での総資産は1440億円、日本国内の長者番付で33位だ。Forbes Japanが毎年開催する「日本の起業家ランキング」では2015年~2017年で3年連続1位を獲得し、時の経営者として注目された。

山田進太郎氏はメルカリでの成功ばかりが注目されがちだが、実はメルカリ(旧コウゾウ)の前にも様々なウェブサービスを開発し、ヒット作を生んでは売却を繰り返している。メルカリの創業はいわゆる「バイアウト長者」となった後の山田進太郎氏による第二の人生であり、そこには金銭的な成功以上の目的がある。

時期経歴
2001年4月早稲田大学教育学部卒
2001年8月ウノウ創業
2010年8月ウノウを米シンガ(Zynga)社に譲渡
2013年2月メルカリ創業
2017年12月メルカリが累計1億ダウンロードを達成
2018年6月メルカリが東証マザーズに上場

メルカリ創業前からウェブ事業でヒットを連発し売却を経験

早稲田大学在学中にインターネット事業を開始

愛知県の東海中学・高校を卒業した山田進太郎氏は早稲田大学教育学部に入学、大学では海外インターンの支援などを行う学生団体「アイセック」に在籍していた。

その後、インターネットの魅力を知った山田氏は知人の紹介でウェブやフリーペイパーなどを扱う学生団体「早稲田リンクス」に参加、活躍が認められて代表に就任した。

学生時代に内定をもらった楽天でインターンとしてオークションサイト「楽オク」の立ち上げに関わりながら、当時の趣味でもあった映画に関して「映画生活」という新着映画情報ウェブサイトを運営していた。当時から「Webサービスをつくって、世界中の人に知ってもらいたい」という野望を持っていたようだ。

ITの受託開発ビジネスで起業

大学卒業後は楽天の内定を断り、2001年8月に「ウノウ」という会社を創業している。当時はIT関連の受託事業を行っており、社員は雇わずに外部のプログラマーと共同で案件をこなしていた。

この頃には大学時代にスタートした「映画生活」の毎月のユニークユーザー数が100万人程度に伸びていたようだ。Googleの開示によると一般的なウェブサイトにバナー広告等を張った場合の1,000ページビュー当たりの収入(CPM; Cost per 1,000 impressions)は約300円であり、月100万人が見ていた「映画生活」だけで月30万円の広告収入を得ていたのではないかと推測される。

自社のウェブサービス開発で成功

2004年に渡米したことでインターネットを通じて世界規模のサービスを作りたいという思いが固まった山田氏は、ウノウ者で社員を雇って写真共有サービスの「フォト蔵」ソーシャルゲームの「まちつく!」といったウェブサービスを制作した。

ソーシャルゲームがまだ流行り始めた頃にリリースした「まちつく!」はmixiやGREEなどにタイトルを提供し、総ユーザー数が500万人を超えるヒット作となった。その他にもメーリングリスト事業の「スグCC」携帯サイト向け広告ネットワークの「NeoAd」などを開発している。

自社開発したウェブサービスを売却

山田進太郎氏はその後、ウノウで開発・運営していたサービスを次々と売却している。映画情報サイトの「映画生活」はぴあ社に売却、メーリングリスト事業の「スグCC」と携帯サイト向け広告ネットワークの「NeoAd」はGMOアドパートナーズ社に売却、写真共有サービスの「フォト蔵」はデジタルガレージ社に売却した。

ソーシャルゲーム「まちつく!」を運営していたウノウ社は2010年8月にシリコンバレーの有名ベンチャー企業であったジンガ(Zynga)社に売却された。ウノウ社の売却後は山田進太郎氏はZynga Japanのメンバーとして勤務していたが、2012年1月に退社している。

事業事業内容売却先
映画生活新着映画情報サイトぴあ
スグCCメーリングリスト事業GMOアドパートナーズ
NeoAd携帯サイト向け広告ネットワークGMOアドパートナーズ
フォト蔵写真共有サービスデジタルガレージ
まちつく!ソーシャルゲームZynga

世界的なIT企業をつくるためにメルカリを創業

事業売却後は世界一周

学生時代からウノウ時代にかけてインターネット上で様々なヒット事業を作り出して売却した山田進太郎氏が経済的な自由を手にしたことは言うまでもない。Zynga社を退職した後、山田氏は世界一周の旅に出る。

世界一周をしようと思った理由は単純でした。会社を辞めて、時間ができた。その時、行きたい場所がいくつもあったんです。次の事業を始めると、しばらく旅行には行きづらくなる。そこで、この機会にまとめて訪れてみようと思いました

山田進太郎 – エンジニアtype / 2012年12月5日

ビジネスのことを考える時間は短かったですね。基本的には、見たい場所を見に行くことに集中していました。ちなみに、世界一周業界的には、半年という期間はかなり短いらしいです(笑)。とにかく行きたい場所を効率的に回るスタイルでした

山田進太郎 – エンジニアtype / 2012年12月5日
メルカリ創業者の山田進太郎氏

そして、世界23か国を回ったのち、山田氏は自身の夢について「ワールドワイドに受け入れられるユニバーサルなサービス」をつくることだと述べている。

ウノウ時代に作った『まちつく!』は、500万以上のユーザーを得ました。日本ではかなりメジャーなサービスに育てられたと思います。だから次は、数1000万人規模、数億人規模のユーザーに愛してもらえるサービスを作りたいんです。そのためには、南米・アフリカ・中東といった地域も視野に入れて考えなければ、と

山田進太郎 – エンジニアtype / 2012年12月5日

コウゾウ(現メルカリ)を創業

世界一周旅行を終えた山田進太郎氏は2013年2月に「コウゾウ」(現メルカリ)を創業した。共同創業者には石塚亮氏と富島寛氏がいた。石塚亮氏はシリコンバレーで起業経験を持ち、富島寛氏は山田進太郎氏の大学の後輩で起業経験を持つフリーのプログラマーだった。

石塚亮

メルカリ共同創業者、元メルカリUS CEO。現個人投資家

富島寛

早稲田大学卒、メルカリ共同創業者。現個人投資家

フリマアプリ「メルカリ」をリリース

同年7月にはフリマアプリ「メルカリ」のAndroid版とiPhone版をリリースし、11月には社名を「株式会社メルカリ」に変更した。なお、「メルカリ(mercari)」という名称はラテン語で「商いをする」という意味があり、英語の「market」の語源になっている。

リリース当初はダウンロード数が伸び悩んだが、イチかバチかで500万円を広告につぎ込んだことでダウンロード数やユーザー継続率が大きく改善した。2014年5月には初のテレビCMを放映し、さらなる利用者拡大に寄与した。2016年12月には一日の出品数100万品を達成した。

2015年4月にはヤマト運輸と提携し、全国一律料金で配送が可能な「らくらくメルカリ便」の提供を開始した。また、2017年6月には日本郵便と提携し、同様の配送サービス「ゆうゆうメルカリ便」をスタートした。

上場前の資金調達

2013年12月には大和証券SMBC出身で当時ミクシィのCFO(最高財務責任者)だった小泉文明氏が参画し、大型の資金調達を加速させた。

ライバルに一気に差を付けようとしたメルカリはテレビCMの枠を積極的に抑え、小泉氏が裏でそのための資金調達に奔走した。上場前の累積資金調達額は120億円を超える。

資金調達時期調達種類調達額
2013年7月第三者割当増資5000万円
2013年8月ユナイテッドと資本業務提携3億円
2014年3月第三者割当増資14.5億円
2014年10月第三者割当増資23.6億円
2016年3月第三者割当増資84億円

メルカリの米国展開

2014年3月には米国子会社を設立し、同年9月からアメリカでのサービスを開始している。同年4月から共同創業者の石塚亮氏が渡米し、メルカリUSのCEOに就任した。

2015年7月には山田進太郎氏が全社のリソースを米国事業に集中することを社内で宣言し、山田氏自身もサンフランシスコに家を借りて移住した。

当時石塚亮氏が率いていたメルカリUSはユーザー数が伸び悩み、山田進太郎は石塚氏を下ろして自身がメルカリUSのCEOを務めることを決断した。屈辱を受けた石塚氏は2018年にメルカリを退職し、今ではエンジェル投資家として活動している。

ユーザー基盤が安定して成長していた日本のメルカリ事業に比べて米国事業は不確実性が高かったが、山田氏のメルカリ創業目的である「ワールドワイドに受け入れられるユニバーサルなサービス」を作るためには米国での成功が欠かせなかった。

東証マザーズに上場

メルカリは2018年6月19日に東証マザーズに上場した。終値ベースの時価総額は7172億円になり、日本を代表する大型IPOとして注目された。

しかし、上場後の初決算(8月9日)では大幅赤字を出し、その後の株価は大きく下落した。メルカリの株価は上場直後につけた最高値から下落基調であり、上場時の株価の5割程度で推移している。

メルカリは上場来赤字が続き、投資家からは将来の利益ポテンシャルに疑問を投げかけられている。フリマ事業とのシナジーを強調していた決済事業のメルペイはPayPayや楽天ペイとの札束競争に負け、米国事業はトップラインの伸びが鈍化する中で先行投資が膨れ上がる。

中小規模のヒット事業を生み出し売却する能力と、世界規模の上場企業を経営する能力は全くの別物だ。ヒットメーカー・山田進太郎率いるメルカリの未来に注目していきたい。

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