PEファンドの正体と転職市場で人気の理由

プライベート・エクイティ・ファンドの定義と役割

非上場株式への投資でリターンを得る

プライベート・エクイティ・ファンド(以下、PEファンド)は投資ファンドの一種であり、非公開株(プライベート・エクイティ)への投資を専門に行う。未上場企業への投資に加えて、上場企業の株式の大半を取得することで非公開化することが一般だ。

PEファンドは、利益成長の余地をもつものの、何らかの要因でそのポテンシャルを活かしきれていない企業の株式に投資をし、企業価値を高めてから売却することでリターンを獲得する。

投資期間は3-5年程度が一般的で、対象企業の株式の大半を取得することで経営権を獲得したのち、コストカットや海外展開の支援、資本政策などを通じて企業価値を高める。

代表的なPEファンド

KKR & Co. L.P.

KKR(Kohlberg Kravis Roberts)は米国ニューヨークを本拠とする投資ファンドであり、1976年に米投資銀行ベアー・スターンズ出身のHenry Kravis、George R. Roberts、Jerome Kohlberg. Jr.の3人によって設立された。

世界で総額20兆円以上を運用し、レバレッジド・バイアウト(LBO)を得意とする。1995年に全米有数の大企業である食品・タバコメーカーのRJRナビスコを250憶ドルで買収したことで有名になった。

日本における代表的な投資先は「日立国際電気」「日立工機」「カルソニックカンセイ」など。案件数は少ないが買収規模では圧倒的な存在感を持つ。

The Carlyle Group

Carlyle(カーライル)はワシントンD.C.を本拠とする投資ファンドであり、1987年に設立された。コーポレート・プライベート・エクイティ(バイアウト、グロース・キャピタル)、リアルエステート(不動産)等の幅広い手法で総額20兆円以上を運用している。

日本における代表的な投資先は「ウィルコム」「インテリジェンス」「ウイングアーク1st」「おやつカンパニー」「オリオンビール」など。2000年に日本のオフィスを開設し、中規模の案件も含めて外資系PEファンドの中で最多の累積投資案件数を持つ。

カーライル ロゴ

Blackstone Group

Blackstone(ブラックストーン)は米ニューヨークを本拠とする投資ファンドであり、リーマン・ブラザーズ出身のピーター・G・ピーターソンとスティーブン・シュワルツマンによって1985年に設立された。バイアウト、不動産投資、ヘッジファンドなどを通じて世界中で総額100兆円以上を運用している。

日本ではこれまで不動産投資を中心に展開していたが、2018年にPE投資のチームを開設した。第1号案件はユニゾン・キャピタルから買収した「あゆみ製薬」となった。

ブラックストーン ロゴ

Bain Capital

Bain Capital(ベインキャピタル)は米国・マサチューセッツ州ボストンに本社を置き、グローバルに展開しているプライベート・エクイティ・ファンドだ。1984年に戦略系コンサルティング・ファームのベイン・アンド・カンパニー(Bain & Co.)のシニアパートナーらによって設立された。

他のPEファンドがゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの外資系投資銀行の投資銀行部門(IBD; Investment Banking Division)からの採用する中で、ベインキャピタルはマッキンゼーやBCGなどのコンサルティング・ファームから人材を採用している点が特徴的だ。ベインキャピタルは投資後に対象会社のオペレーションに深く関与する。

2006年に日本オフィス開設し、国内ではすかいらーく、大江戸温泉物語など累積16件の投資実績を持つ。2018年6月に東芝メモリに投資したことで一般にも認知された。

PEファンドが転職市場で人気の理由

エリートサラリーマンの頂点

Bloombergがまとめた2017年の全米企業における役員報酬ランキング(下記)では上位10人のうち6人がPEファンドに所属している。残りの4人はSnapやTeslaなどのスタートアップの創業者であり、巨万の富を得るためには起業かPEファンドと言っても過言ではない。PEファンドはエリートサラリーマンのキャリアの頂点と言えるだろう。

順位氏名所属役職年間報酬
1Evan SpiegelSnap Inc.Co-founder & CEO$504,460,609
2Scott NuttallKKR & Co.Co-President$213,999,206
3Joseph BaeKKR & Co.Co-President$213,554,122
4Elon MuskTesla Inc.Founder & CEO$150,039,583
5Sunder PichaiAlphabet Inc.CEO$144,338,787
6Rob RoySwitch Inc.Founder & CEO$143,594,138
7Stephen SchwarzmanBlackstone GroupCo-founder & CEO$125,519,429
8George RobertsKKR & Co.Co-founder & Co-CEO$121,313,549
9Henry KravisKKR & Co.Co-founder & Co-CEO$121,036,116
10Tony ResslerAres ManagementCo-founder & Chairman$108,904,413

なお、PEファンドで大きな果実を得るためにはシニアポジションで自ら投資案件を獲得してくることが必須だ。これは案件を回すことよりも難易度が高く、かつ個人のキャラクターやセンスに依存する部分が大きい。真面目にモデルを回して経営支援をしているだけでは成功できないという点は見落とされがちだ。

経営と金融の合わせ技

PEファンドが人気なのは役員になったときの給料の高さだけではない。PEファンドは企業を買収し、株主として経営権を握って企業の価値を高め、高いリターンを得られる価格で売却する必要がある。

東大・早慶のトップ学生にはファーストキャリアとしてコンサルティング・ファームや投資銀行が人気だが、PEファンドでは両者のスキルが非常に高いレベルで求められる。PEファンドが経営と金融の総合格闘技と呼ばれる所以はここにあり、高い給料だけでなく知的な刺激を求めるエリートを惹きつけている。

日本よりもプロフェッショナル系のキャリアパスが浸透しているアメリカやイギリスでは一流大学を卒業し、投資銀行かコンサルティング・ファームで2年間のアナリスト経験を積んだのちに、PEファンドにアソシエイトとして入社するのがキャリアの王道コースと呼ばれる。

魅力的なセカンドキャリア

日本ではPEファンドの業界規模がまだ小さいためあまり認知されていないが、PEファンドをやめた後のセカンドキャリアはとても充実している。もちろん勤続年数やファンド内での評価にもよるが、経営と金融の総合格闘技で身につけたスキルセットはどこに行っても重宝されやすい。

具体的には上場前のベンチャーのCFOや外資系企業の日本拠点のCXO、ヘッジファンドなどが人気のポジションだ。一般論として、日系よりも外資系のPEファンド出身者の方がより魅力的なキャリア機会を得ている印象がある。

また、PEファンドを経て起業するケースも増えてきている。コンサルティング・ファームなどに対してエキスパート紹介サービスを営む「ビザスク」の創業者である端羽氏はゴールドマン・サックスとユニゾン・キャピタル(日系大手PEファンド)を経て同社を設立している。

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