人材・キャリア

「営業不要論」はウソ、高付加価値ビジネスは営業力が命

営業職の人口は徐々に減少している

「営業不要論」が叫ばれるようになってから久しい。インターネットの普及によって誰でも情報にアクセスすることが出来るようになり、営業の価値が薄れたと言われている。新卒の学生の間でも営業職の人気は低く、涼しいオフィスで企画やデザインをするような非営業ホワイトカラー職に人気が集中している。

厚生労働省の「労働力調査」によると過去10-15年間で営業職の人数は減少傾向にある。下記の表のとおり、就業者総数に占める販売従事者の割合は低下している。日本全体では、限られた労働力の使途として営業職員の重要性は低下しているように見える。

就業者数(百万人)2004年2009年2014年2019年
販売従事者(A)9.018.918.578.56
就業者総数(B)63.2963.1463.7167.24
% 販売従事者(A/B)14.2%14.1%13.5%12.7%
厚生労働省 – 労働力調査

製薬会社のMRは衰退傾向が見える

次に営業の価値を業界別に考えてみる。製薬会社のMRは不動産や保険と並んで営業職の花形と呼ばれる職業だったが、近年はMRの新卒採用の見直しの動きが広がり、業界全体のMRの人数は減少傾向にある。

年度201320142015201620172018
MR人数65,75264,65764,13563,18562,43359,990
% 前年増加率-1.7%-0.8%-1.5%-1.2%-3.9%

代わりに伸びているのがデータを活用したマーケティングだ。エムスリーが展開する「MR君」を中心に、医療関連のデータを収集・活用して少ない人員で効率的に販促活動をするためのツールが増えている。

背景には国の医療費削減の圧力があり、MRの人件費を薬価に載せる従来のスタイルは変革を求められている。特に製薬業界では過剰接待が横行していたこともあり、今後もMRの人数現象・営業活動の規制強化が進むと思われる。

生命保険は営業力の勝負だが代理店シフトが進む

国内の生命保険業界は年間の保険料ベースで約35兆円の巨大マーケットだが、歴史的に営業力勝負の市場になっている。保険会社はあえて商品を複雑にすることで消費者による比較を困難にし、営業力勝負の土俵に持ち込もうとしてきた。

保険の営業職員は今でも歩合制が基本であり、成績によっては数千万円~1億円の高額なボーナスが期待できる。生命保険業界には年間で1億円以上の手数料収入を稼いだ営業マンのみが入れる「MDRT」という公式のコミュニティがあり、業界の羽振りの良さを象徴している。

一方で、1996年の規制緩和以降、生命保険会社の専属営業職員から「ほけんの窓口」などの乗合代理店チャネルへのシフトが進んでおり、今後も構造的な成長が持続すると思われる。

複数の保険会社の商品をフェアに比較したいというニーズは若年層を中心に広まっており、特定の保険会社の専属営業職員は徐々に縮むパイの中で取り合いゲームを強いられる展開となる。

年度2009201220152018
保険会社の営業職員68.1%68.2%59.4%53.7%
保険代理店6.4%6.9%13.7%17.8%
通信販売8.7%8.8%5.6%6.5%
生命保険文化センター

高付加価値サービスに営業は欠かせない

MRや保険の分野で従来型の営業が苦戦を強いられる一方で、営業の価値が高まっいるのがコンサルティング業界だ。他の先進国と比較してGDP対比で広大な成長余地をもつ国内の経営コンサルティング市場は構造的な成長が続いている。

コンサルティング業界は人月ビジネスであるため需要が供給を上回る限りにおいては採用した分だけ成長することが出来るが、急激な人員拡大に合わせて案件獲得のペースを上げていく必要がある。

一般的には扱う商材の価格が高く専門性が高いほど営業の難易度(=価値)が高いが、経営のアドバイスという高額な無形商材を売るコンサルティング業界は営業の難易度(=価値)が最も高い業界の1つだ。

コンサルティング会社では組織ピラミッドの下部に位置するアソシエイトとマネージャーが中心となって日々のプロジェクトを回し、組織のトップに位置するパートナー(≒役員)が営業の役割を担う。

アソシエイトやマネージャーレベルは比較的採用しやすい一方で、案件を売るパートナーは希少性が高く、叩き上げが基本になる。業界全体が急成長する中で、案件を売れるコンサルタントの価値は今後さらに高まっていくだろう。

コンサルタントの時間の使い方(役職別)

なお、役職が上がるにつれて営業の役割が強くなるのはプロフェッショナルファーム一般に言える傾向であり、投資銀行や会計事務所、弁護士事務所でも同じだ。

ジュニアの頃は現場で死ぬほど働き、シニアになった途端に営業マンになることを求められる。Excelやパワーポイントが得意な優秀なジュニアでも営業に向いていない人は一定数存在し、役割のシフトに乗り切れずに業界を去る人も少なくない。

余談だが、ベイカレント・コンサルティングではプロジェクトを回すコンサルタントと営業を完全に分離しており、少人数の営業部隊が効率的に案件を獲得する。営業が現場を知らないという欠点はあるが、コンサルタントはシニアになっても営業をせずにプロジェクトに集中できるというメリットもある。

ネットワーキング
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