コンサルティング

【スポットコンサル】ビザスクのビジネスモデルと今後の成長ポテンシャル

2020年3月10日、株式会社ビザスク(VisasQ; 証券コード4490)が東証マザーズに上場した。 コロナウイルスと原油安で大荒れのマーケットの中、公開価格1500円に対して初値は1310円を付けた。

ビザスクはビジネス上の助言を求めている企業や個人と、専門的な相談に応じる個人を仲介する「スポットコンサル」事業を展開する。主力は企業が個人に1時間のインタビューをするサービスで、対面でのインタビューに加えて電話会議も多く活用されている。

大混乱のマーケットの中、ビザスクの同日の終値は1335円で時価総額は約109億円、これは2020/2期通期の当期純利益予想53百万円に対してPER 206倍という水準だ。2020/2期にかけての売上高成長率は56.3%と申し分ない。株式市場はビザスクの今後の成長性に大きく期待している。

ビザスクCXOの経歴

ビザスクはCEOの端羽英子氏とCTOの花村創史によって共同創業された。端羽氏がゴールドマンとユニゾン・キャピタル出身であることからか、金融系のバックグラウンドが目立つ。

氏名役職直近の所属
端羽英子CEOユニゾン・キャピタル(日系PEファンド)
花村創史CTOグリー株式会社
瓜生英敏COOゴールドマン・サックス(外資系投資銀行)
安岡徹CFOユニゾン・キャピタル(日系PEファンド)

端羽英子CEO

  • 東京大学経済学部卒業
  • ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門
  • 日本ロレアル
  • MIT(マサチューセッツ工科大学)にてMBAを取得
  • ユニゾン・キャピタル
  • ビザスク(旧:walkntalk)を創業
  • USCPA(米国公認会計士)合格
端羽英子CEO

花村創史CTO

  • 横浜国立大学博士課程中退
  • 株式会社日本枝芸(現rakumo)
  • グリー株式会社
  • ビザスク共同創業者、COOに就任
花村創史CTO

瓜生英敏COO

  • 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
  • ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門、マネージング・ディレクター(TMTカバレッジ)
  • マネーフォワード社外監査役
  • ビザスク、CFO
  • ビザスク、COO
瓜生英敏COO

瓜生氏は2018年の東芝メモリのM&A案件を東芝側のアドバイザーとしてリードしていた。東芝メモリは外資系PEファンドのベインキャピタル率いるコンソーシアムに約2兆円で買収され、東芝の債務超過・上場廃止危機を救った。また、端羽氏と瓜生氏は東大時代にテニスサークルに属しており、瓜生氏は端羽氏の先輩にあたる。

安岡徹CFO

  • 東京大学法学部卒業
  • J.P. モルガン証券株式調査部
  • ユニゾン・キャピタル、ディレクター
  • ビザスクCFO
安岡徹CFO

ビザスクの事業内容は主にコンサル会社向けのエキスパート紹介

ビザスクは専門スタッフがインタビューの設定をフルサポートする「ビザスクinterview」を中心に、4つの事業を展開する。同日に公開した「成長可能性に関する説明資料」は、同社の事業内容は「ビジネス分野に特化したナレッジシェアリングプラットフォームの運営」と表現している。

事業事業内容・特徴
ビザスクinterviewビザスクのスタッフによるフルサポートのスポットコンサル
ビザスクliteセルフマッチングによるスポットコンサル
エキスパートサーベイ複数のユーザー、エキスパートからオンラインで回答を収集
業務委託レポート作成、ハウツー指導など

主力はフルサポート型のスポットコンサル事業

「東京証券取引所マザーズへの上場に伴う当社決算情報等のお知らせ」によると同社は知見プラットフォーム事業の単一セグメントで構成されており、2019年2月期の取扱高の80%以上は「ビザスクinterview」というフルサポート形式のスポットコンサル設営サービスから来ている。

当社は 、顧客のニーズに応じて、ビジネス知見を有するアドバイザーと顧客をマッチングし、1時間単位の電話や対面でのインタビュー(当社では「スポットコンサル」と呼んでおります)を設営するサービスを提供しており、その中でも、当社が法人クライアントの依頼に基づきアドバイザーをマッチングするフルサポート形式のスポットコンサル設営サービス「ビザスク interview」を、 当社のメインサービスとして提供しております。

ビザスクのメイン顧客はコンサル会社

同サービスのメイン顧客はコンサルティング・ファームであり、 同社が2020年2月3日に提出した新規上場申請のための有価証券報告書によると、2019年2月期において営業収益の20.1%は外資系戦略コンサルティング・ファームのボストン・コンサルィング・グループ(Boston Consulting Group; BCG)向けであることが分かる。

ビザスクの主要な顧客

また、同年度末の売掛金の相手先別内訳には、BCGに加えてBain & CompanyやMcKinsey & Company、野村総合研究所といったコンサル他社の名前が並び、前受金においても同様にアクセンチュアやアビームコンサルティング、 Arthur D. Littleなどのコンサルティング・ファームが名を連ねている。

ビザスクの相手先別売掛金残高
ビザスクの相手先別前受金残高

例えば、BCGが三井物産とのプロジェクトを持っていたとして、競合である三菱商事の取り組みについて参考にしたい場合、ビザスクに依頼をしてその知見を持っている人との電話インタビューを設定してもらう。BCGは1時間で10万円をビザスクに支払い、ビザスクはそこから5万円をインタビュー対象者(エキスパート)に支払うという仕組みだ。

なお、BCGの現役社員に確認したところ、クライアント会社の直接の競合にあたる会社の現役社員に対してインタビューを行うことは禁止されているようだ。ただ、競合企業の退職者に対してはインタビューが可能であり、上記の例では三菱商事を退職済みの元社員に対して三菱商事の内情を聞き、三井物産の経営戦略の参考にすることは認められている。

ビザスクを取り巻く事業環境

ビザスクの今後の成長可能性を考えるにあたり、ENS市場の動向、シェアリング・エコノミーの浸透、そして日本における働き方改革の流れを注視したい。

グローバルのENSは成長市場

特定の分野の専門家を紹介するサービスは一般にENS(Expert Network Service)と呼ばれ、コンサルティング市場が成熟している北米や欧州では既に市民権を得ている。 グローバルでのENSの市場規模は2020年に約1000億円に到達し、その後も成長が続くと期待されている。

ENS(Expert Network Service)

特定の業種や技術に関する専門家のネットワークを有し、顧客の要望に合わせて最適な専門家を紹介することで紹介手数料を得るビジネスを指す。欧米を中心に2000年代から普及し始め、GLGやGuidpointなどのグローバルプレイヤーも存在する。

ENSの市場規模

グローバルのコンサルティング市場がCAGR 4%で成長してきたが、ENSの市場伸びはそれを遥かに上回る。 これまでコンサルタント自らがCold Callで専門家から情報を得ていた作業が、ENSという新しいサービス形態の出現によってリプレイされたと理解できる。

世界のコンサルティング市場規模

ENSを主に利用するのはマッキンゼーのような戦略系のコンサルティングファームであると思われる。2019年の戦略コンサルティング市場規模が5兆円だとすると、ENSに支払われる1000億円はコンサルティングファームの売上の2%に相当する。

シェアリング・エコノミーの追い風

社会のリソースが流動化する「シェアリング・エコノミー」の普及はビザスクの成長に追い風となる。ビザスクを使うことで個人が自分のスキルを活用し、雇用に頼らずマネタイズすることが出来る。

ビザスクは2019年8月に「一般社団法人シェアリングエコノミー協会」に入会し、同協会の幹事に就任している。

シェアリングエコノミー協会のロゴ

働き方改革の追い風

働き方改革は2つの意味でビザスクにとって追い風となる。1つは、企業が仕事の生産性を意識するようになったことで、これまで非効率なデスクトップ・リサーチに依存してきた仕事をエキスパートへのインタビューで効率よく解決しようとするトレンドだ。

もう一つのポジティブ・エフェクトは労働時間の短縮や副業解禁の流れだ。大企業を中心として会社員の余暇時間が増え、個人で新たなチャレンジをする人が増えるだろう。また、副業を解禁する企業が増えてきたことによって、個人が自分の知識や経験を時間単位でマネタイズすることが可能になる。

シェアリングエコノミー

ビザスクの資金調達

ビザスクは創業9年目でマザーズ上場に至ったが、上場前の外部資金調達は創業当時の2回のみで、その後は自己資金と借入(デット)のみで成長してきた。

調達時期調達種類調達額評価額
2014年2月シード0.7億円3.4億円
2015年7月シリーズA2.6億円11.6億円
2017年12月長期借入1.5億円

IPO時の株主構成

株主保有比率役職/所属
端羽英子51.56%CEO・共同創業者
DCM Ventures12.33%ベンチャーキャピタル
ベンチャーユナイテッド9.67%ベンチャーキャピタル
サイバーエージェント・キャピタル6.28%ベンチャーキャピタル
花村創史4.95%CTO・共同創業者

ビザスクは2020年3月10日に東証マザーズへの上場を果たし、IPOと第三者割当増資によって合計9.1億円の調達に成功した。安岡徹CFOは日経新聞の取材に対して「調達資金は人件費や広告宣伝費に使う」とコメントしている。

ビザスクの今後の成長可能性

ビザスクの今後の成長を考えるにあたり、現在の主要事業である国内ENS事業のポテンシャルを推定する。成長のドライバーは大きく分けて、①国内戦略コンサルティング市場の拡大、②国内戦略コンサルティング・ファームにおけるビザスク利用額の増加、そして③コンサルティング・ファーム以外の顧客向け売上の増加の3つが考えられる。

このうち、①国内戦略コンサルティング市場の拡大については、日本のコンサル市場は長期的に成長領域と位置付けられているが、足元のコロナウイルスの影響とそれに伴う景気サイクルの変化を考慮し、現段階ではゼロと見なすことにした。状況が変わればアップデートしたい。

次に、 ②国内戦略コンサルティング・ファームにおけるビザスク利用額の増加について、まずは国内の戦略コンサルティングの市場規模を推定したい。業界首位のマッキンゼーのパートナー数を見ると、2018年時点でグローバルで2000人以上のパートナーが在籍していたようだ。

一方、日本のマッキンゼーのHPを確認すると、2020年3月時点で52名のパートナーの名前が掲載されている。コンサルティング・ファームはアソシエイトクラスの人月単価と給料の差分をパートナークラスがピンハネすることで成り立っているため、オフィスごとの売上に応じてパートナーの人数が決まると考える。

従い、日本のマッキンゼーの売上は同社の世界全体の売上の約4%と推定する。 戦略コンサルティングは外資系が中心であるため、日本の戦略コンサルティング市場も同じく世界の4%となる。日本のGDPが世界全体に占める割合が約6%であることを踏まえると妥当な範囲だろう。

世界のGDP

世界のENSの取扱高が1000億円であるため、日本のENS市場は取扱高ベースで40億円になり得る。ビザスクの2020年2月期通期の営業収益は会社予想で10億円で既に目標市場規模の25%を占める。

競合にはグローバルで展開しているGLG(Gerson Lehrman Group)やGuidepointといったENS事業者が存在し、外資系コンサルティング・ファームの日本拠点はこれらのグローバルベンダーと既にリレーションがあることを考えると、ビザスクがコンサルティング・ファーム向けの国内ENS市場を独占するとは考えづらい。4-50%の市場シェアを取れれば上出来ではないか。

ENSの登録人数

ユーザー視点ではビザスクの価値は彼らが抱えるエキスパート・ネットワークに存在する。ビザスクの国内登録者数はリニアに伸びており、トップラインの成長と一致している。副業解禁などを追い風に今後も登録者の伸びは続くと思われるが、どこかで頭打ちは来るだろう。エキスパートとして登録することは自由だが、コンサルタントが1時間に10万円も払って話を聞きたいと思う人が日本に何十万人もいるとは想像しがたい。

また、エキスパートの立場に立てばビザスクだけに登録する理由はない。付加価値の高いエキスパートはGLGなど複数のENSに登録し、ENS間のネットワークの差が縮まることも予想される。本質的な差別化要素がない場合、ビザスクが独占的なシェアを握ることが難しいだけでなく、価格競争によりマージンが悪化することも想像に難くない。

最後に③コンサルティング・ファーム以外の顧客向け売上の増加というシナリオを考える。冒頭紹介したビザスクの前受金と売掛金の相手先上位リストにアパレルのStripeと総合電機のパナソニックが含まれていたことから、一部の事業会社は自らENSを利用していることが分かる。

また、グローバルで知見を共有している外資系コンサルティング・ファームと違い、日系事業会社にとってはビザスクが日本人に特化して手厚くサポートしてくれる点は差別化要素になりうる。

一方で、懸念すべき点は事業会社にとってのENSの利用価値にある。エキスパートという名の素人と1時間のインタビューを行うことに10万円の価値を見出せる状況はかなり特殊だ。

コンサルティング・ファームはクライアントのCEOから今後数年間の経営戦略に対するアドバイスを求められ、そのメッセージを支えるための重要な1ピースとしてインタビューのコメントを使用する。同様に、ある企業の買収を検討しているPEファンドにとって、競合企業の出身者とディスカッションする機会はとても貴重だ。

それに比べ、日系の事業会社においてそのような重要な意思決定を求められることは限定的であり、そのために外部のコンサルタントを雇っているケースも多い。また、社員が自分自身のネットワークを使って情報を確認すればタダで済む。月収50万円の営業社員のために1時間10万円のインタビューを会社が許可するとは思えない。

以上から、ビザスクの当面の成長機会は戦略系のコンサルティング・ファーム向けのエキスパート紹介から来るものの、今の倍程度の規模で頭打ちになるという一旦の結論を出したい。もちろんベンチャーなので今後の非連続な成長ストーリーには期待しつつ、継続して決算を注視していきたい。

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