IT業界

ヤフー(Zホールディングス)の成長と衰退の歴史

かつてはGoogleの対抗馬として注目された高成長ネット企業

ひと昔前のヤフーは、検索エンジンを自前で開発し世界のインターネット市場をリードする存在だった。ヤフーは1996年にポータルサイト「Yahoo! JAPAN」をリリースし、日本のIT業界を牽引する存在となった。

2002年以前のヤフーはディレクトリのみを自社開発し、検索機能はGoogleにアウトソースしていたが、検索エンジンに事業オポチュニティを感じたヤフーは2002年に検索エンジン開発の「Inktomi」、2003年にリスティング広告の「Overture」というテック企業を買収して検索技術を次々と社内に収めた。2004年2月には「Yahoo Search Technology(YST)」という自前の検索エンジンを発表し、Googleに並ぶ検索エンジンとして注目を集めた。

Googleは人間のやることを徹底的になくすことにこだわった一方で、ヤフーはユーザーの満足度を高めるために人間の力を使う路線を目指した。今となっては正解は明らかだが、当時は検索エンジンにおける人間(ヤフー)vs 機械(Google)の戦いが起きていた。

Yahoo! JAPANのロゴ

検索エンジン開発に敗れて迷走

Googleの検索エンジンが世界を席捲

しかし、インターネット検索の世界でヤフーはGoogleに敗北する。Webページの登録数や検索ボリュームは天文学的な量に膨れ上がり、機械による数理学的処理に特化したGoogleのシステムが検索エンジンの市場を席捲した。

ヤフーが白旗をあげたのは2010年だが、それ以降はYahoo!検索にGoogleのアルゴリズムを使用し、Googleに対してシステム使用料を支払う関係となった。ヤフー(現Zホールディングス)の決算資料には「経営上の重要な契約等」としてGoogleに対するサービスフィーの支払いが言及されている。

日本国内ではYahoo!検索のシェアが高いが、グローバルではGoogleのシェアが圧倒的だ。Googleは圧倒的なシェアを武器にヤフーに対して強い交渉力を持ち、Googleへのサービスフィーの支払いはヤフーの利益を圧迫した。

ヤフーの決算書で言及されているGoogleの検索エンジンの利用契約

利益成長なき事業規模の膨張

ヤフーが検索エンジン開発を断念した2010年以降、同社の業績は芳しくない。ネット系企業は資産を持たずに利益を出せる点が魅力なはずだが、ヤフーの財務はその真逆を行く。10年間で総資産は10倍弱に膨れ上がっている一方、営業利益や親会社株主に帰属する純利益は全く成長していない。

検索広告を中心とするメディア事業の成長が頭打ちになったヤフーはヤフオク!やアスクル、ZOZOなどのEコマース事業とジャパンネット銀行などの金融業を強化しているが、メディア事業に比べて利益率は著しく低い。検索エンジン開発で敗北した2010年以降のヤフーは利益の出ない分野でいたずらに成長を目指していると言わざるを得ない。

連結財務数値(十億円)2010年3月2015年3月2020年3月
総資産471.71,342.83,933.9
売上高292.4652.31,052.9
 %総資産回転率62.0%48.6%26.8%
営業利益159.6225.0152.2
 %売上高54.6%34.5%14.5%
当期純利益(親会社株主帰属)92.2171.688.0
 %売上高31.5%26.3%8.4%
(会計基準)(日本基準)(IFRS)(IFRS)

なお、ヤフーのIR資料(統合報告書)には下記のような右肩上がりのグラフが掲載されているが、注意深く見ると営業利益の線が出ていないことに気付く。伸びているのは売上収益とPV数だけで営業利益は上記の表のとおりフラットだ。会社の都合の良いように作られたプレゼンに騙されてはいけない。

Googleと明暗の分かれた株価

ヤフーが迷走する中で、検索エンジンで天下を取ったGoogleはAIや機械学習の分野で世界のトップを走り続ける。株価は安定して上昇志向にあり、2010年代の世界を代表する銘柄の1つとなった。

一方のヤフーは様々な提携や買収などのイベントによって一時的に株価が乱高下するものの、過去10年間で株式価値の増加はわずかだ。前述の通り資産効率も利益率も悪くなったヤフーにはもはやネット企業の旨味は少なく、投資家の期待値レベルも落ち込んだ。

ソフトバンクのおもちゃに成り下がったZホールディングス

2000年代までのヤフー株式会社はインターネットの波に乗った成長株として評価されていたが、今ではすっかり金融株か投資会社としての評価になっている。配当利回りが約3%あることからも、ヤフーはすっかり成熟した企業になったと言わざるを得ない。

現在のヤフーはZホールディングスという名前に変えられ、通信会社のソフトバンク(SBKK)が44.1%の株式を保有する連結子会社となった。もはや自力での成長をあきらめたZホールディングスは、親会社のソフトバンク(SBKK)及び投資会社であるソフトバンク・グループ(SBG)の意向を無視できない。

モバイル決済を手掛けるPayPayは当初ソフトバンク(SBKK)とZホールディングスが50%ずつ出資する子会社だったが、今ではソフトバンクグループ(SBG)が50%、ソフトバンク(SBKK)が25%、Zホールディングスが25%を出資するという歪な構造になっている。

孫正義は国内のモバイル決済市場を取るために多額のキャッシュバックキャンペーンを行うが、三木谷氏の率いる楽天も「楽天ペイ」を普及させようと大規模なポイントキャンペーンを連発する。日本のIT業界を牽引してきた長年のライバルである孫氏と三木谷氏による個人的な戦いとも見えるこの「札束バトル」にZホールディングスはただ翻弄されるだけだ。

error: